人生百年時代を迎えて“生きる”を問う「幸福寿命」 第2回 現在、100歳を超えている人々が約7万人弱。果たして、長寿は幸福なのか?長寿社会における幸福とは? 幸福な寿命とは?慶應義塾大学医学部教授であり、第19回日本抗加齢医学会総会会長の伊藤 裕先生と考えます。前回の記事は
こちら 対談 1.と2.を読む3.人と人の“あいだ”に「幸福な長寿」がある
作家 山田 宗樹先生伊藤 先生の小説では“人はいずれ死ななければならない”という前提に立って、いろいろな背景を持つ人々がうまく折り合いをつけて一つの社会としてつながっていく「共生」のあり方についても丁寧に描かれていて共感することが多かったです。
超高齢社会の日本では総人口に占める高齢者人口の割合が28・1パーセント(2018年)に達し、年老いた人たちとそうでない人たちがグルーピング化され始めています。
そして、そのことによって新たな問題が生じていると感じています。たとえば介護の問題。これまでは介護する側の人数が圧倒的に多かったわけですが、今後、介護される側の人数が増える。そのとき、両者はうまく折り合いをつけて共生できるのか。今から真面目に考えなければならない問題の1つだと思うのです。
山田 パワーが逆転するわけですから“若い人たちの労働力に頼る”という従来のやり方は機能しなくなるでしょう。ロボットなどテクノロジーの導入を含め、新しい介護の方法を模索しないと間に合わないのでは。
伊藤 同時に介護される側の人間(高齢者)も“次世代のために自分たちで何とかしなくちゃいけない”という覚悟を持つことが持続可能な社会をつくるうえで必要になってきます。私は先生の小説から常にこういうメッセージを受け取っており、その基調を好ましく感じているのですが、どう思われますか。
山田 私も次の世代を思いやることはとても大切なことだと思っています。しかし、この感情は特別なものではなく、ごく自然なことだと捉えています。本当に危機的な状況に見舞われたとき、多くの人は同じように考えるのではないでしょうか。