どれでもないけれどすべてを含んでいる藤田
ご夫妻に藤田のインプレッションをたずねてみました。
近代絵画の中で印象派や後期印象派などは明るくきれいな印象、中世から続く宗教画の世界は端正に描かれ、写実主義の人たちの絵は見た目に忠実。
安東さんは「藤田の絵はどれでもないけれど、すべてを含んでいる。それってすごいことだと思う」と語ります。淡々としていますが輪郭がきちっと線で描かれていて、日本画的ではあるけれど西洋画の技法をしっかり踏襲している。また、ルネッサンス絵画を勉強した痕跡もちゃんとある。
「藤田の絵はかわいいけれど、すごいんです」と、コレクターならではの解説はさらに熱を帯びます。なぜかわいいのかといえば、きっちり描いているから。それこそが藤田の“かわいいの正体”だと安東さんは考えています。藤田のきっちりと描き込める技量、安東さんはそのとりこになっているのです。
「家内がその感性で直感的に感じるかわいいと、私の理屈っぽいかわいいとが合致したら、間違いなくコレクションに迎え入れることになるでしょうね」と。安東さんにとって藤田はやはり特別なのです。「現代美術の世界を除けば、日本人でおそらく唯一無二の世界的に知られた画家」と、安東さんは藤田を語ります。