“傲(おご)ることのない好青年”を支える万全のチーム体制
ペース走(一定のペースで一定の距離を走る練習)で汗を流す三浦選手。大学生の指導がメインの長門監督に代わり、曽波マネージャーはコーチの役目も果たす。
2021年に3000メートル障害の日本記録を18年ぶりに更新。以来、国内では敵なしの三浦選手を支えるのは、卒業後も指導を仰ぐ順天堂大学の長門監督と、高校・大学の先輩である曽波マネージャー、彼の挑戦を応援する所属先のSUBARU陸上競技部だ。
「決して傲ることのない好青年です」と長門監督が褒めれば、曽波マネージャーは「どんな環境でも自分を見失わないで堂々としていられるのは強み」と分析する。
高さ91.4センチの障害物を高速で越えていく競技において、長身の選手が有利なのは明白。東京五輪金メダルのソフィアン・エルバカリ選手(モロッコ)は身長194センチで、長門監督の言葉を借りれば、障害物を「またいでいる」。しかし、168センチの三浦選手は抜群の身体能力と技術を駆使して、その不利な局面で優位に立つのだから驚きだ。世界最高峰のレースで障害物を一つ越えるごとにぐんぐんと順位を上げていく姿に胸がすく。
「ラストスパートを磨いています。メダル獲得への一番の近道だと思うので」。迷いなく話す三浦選手にとって2度目の五輪がまもなく幕を開ける。
3000メートル障害とは? イラスト/ワークスプレス
3000メートルを走る間に障害物を35回(うち7回が水濠)越える競技で、世界記録は男子が7分52秒11、女子が8分44秒32。障害物のバーは12.7センチ角で、高さは男子が91.4センチ、女子が76.2センチ。横幅は第1障害物のみ5メートルで、ほかは3メートル94センチ以上。外側を通ったり、くぐったら失格。水濠は横幅3メートル66センチ、水深は50~70センチ。
SUBARU陸上競技部・奥谷 亘監督が語る「三浦選手がチームにもたらすもの」
写真提供/SUBARU陸上競技部
うちはもともと地元出身の選手を中心とした叩き上げのチーム。その選手たちががんばってニューイヤー駅伝で準優勝した年、「チームがもう一段階上に行くために」三浦選手を勧誘しました。
彼の選手としての強みは、ぶれない上半身とストライド(歩幅)の広さ。気さくで協調性もある好青年です。三浦選手の加入でほかの選手たちの意識や取り組みが向上することと、地元群馬開催のニューイヤー駅伝がさらに盛り上がることを期待しています。パリ五輪では万全な状態でスタートラインに立ってほしい。僕も現地で見守ります。
奥谷 亘(Wataru Okutani)
1975年兵庫県生まれ。西脇工業高等学校卒業。2000年よりSUBARU陸上競技部所属。05年世界陸上ヘルシンキ大会のマラソンに出場するなど世界で活躍。11年より同部監督。
●三浦龍司選手に一問一答Q 試合前に聴く音楽は?
A ONE OK ROCKの曲など、とにかく盛り上がって、モチベーションが上がる音楽。
Q 趣味は?
A 映画鑑賞と、にわかですけど、F1などモータースポーツを観ること。
Q 今まで訪れた中で好きな国は?
A イタリア。街並みがきれいで、本場のパスタやピザがすごくおいしかった!
進化し続けているシューズは大切な相棒。
2つのストップウォッチは練習の必需品。
ぶら下がってストレッチ。肩甲骨の可動域の広さも武器の一つだ。