川野泰周和尚が説く運の巡らせ方 らくらく瞑想で「開運メンタル」のすすめ 第1回 禅の教えでは、運のいい人、運の悪い人という考え方よりも、よい行いがよい巡りとなるという教えを重んじます。しかし、よい行いをするには心のありようが問題です。心が疲れていては、運の巡りもかんばしくないでしょう。らくらく瞑想を活用して心をリセットし、“運が巡る人生”を切り開いていきましょう。
川野泰周和尚に聞く「開運」に導く禅の教え
川野泰周(かわの・たいしゅう)臨済宗建長寺派林香寺 住職。精神科医・心療内科医
精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・日本医師会認定産業医
一般社団法人日本モメンタム協会理事
近著『クヨクヨしない すぐやる人になる「心の勢い」の作り方』(恩田 勲 共著/東洋経済新報社)
「善因善果」。自ずと道は開いていきます
禅の教えでは、幸運は外から与えられるものではないという考えです。すべては自身の行動により、まわりとのかかわり合いから起こるべくして起こった結果ということです。それが「縁起の法則」であり、因縁として巡るという導きです。
「善因善果、悪因悪果」という仏教の教えがあります。“よい心持ちで、よい行いをすれば、喜びを得る”。一方で“悪い行いをすれば、悪い結果がもたらされる”と説かれています。現世の開運術でしょう。
臨済宗の白隠慧鶴(はくいんえかく)禅師は「正念工夫(しょうねんくふう)」という教えで、物事をまっすぐにとらえることで豊かな人生が開かれることを説いています。あるとき、雨が降ってきて、雨が降る庭を見て、雨滴で緑がいっそう美しく見えると感じた。これは正念のとらえ方です。かたや、鬱陶しい雨で気分が落ち込むととらえた人がいます。これを「妄念(もうねん)」といい、妄念は次第に心を疲れさせていきます。心のありようによって、見える現実がいかに異なるかのたとえで、幸も不幸も心次第ということがわかるでしょう。
前向きな思考で運がよくなるという法則
心理学者であるリチャード・ワイズマン博士の著書『運のいい人の法則』(角川文庫)のなかで、“運がいいと自覚している人”についての統計を取りました。その結果が、1いつもチャンスを最大限に活用する。2直感と本能に耳を傾ける。3自分の将来に期待している。4不運な出来事があっても、そのなかから幸運の要素を読み取っている、ということです。つまり、運がいいと思う人は、自分の行動に対して、ラッキーだと前向きにとらえることができるから、結果的に“運がいい人”になるということがわかりました。
さらに運がいい人の行動を見ると、1外向的で誰とでも交流できる。2諦めずに根気よく続けられる力がある。3肩の力をぬいて物事を俯瞰できる、という傾向が見られました。運がいい人は、人や物事にかかわることが嬉しく、人のために何かをすることを楽しいと感じ、行動を続ける意欲があるからチャンスが生まれ、幸福感に繫がるということでしょう。
では、運がよくないと思っている人の結果を見てみましょう。運がよくない人は、人や物事と積極的にはかかわらないようにして、限られた行動範囲で過ごします。そして判断するときは、ネガティブな側面を切り取って、ダメだから切り上げようと諦めが早いという報告です。この事例からもわかるように、常に好奇心を持ち、一歩踏み出すことで道が開け、前向きに利他的行動を楽しんでいると開運していくと、読みとけます。
禅の「善因善果」の教えや「正念」の姿勢が、ワイズマン博士によって検証されたということでもあるでしょう。