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7日間に及ぶ神々の議り事に祈りを捧げて。出雲大社の「神在祭」

2020.09.30

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幽(かく)れたる神議りに奉仕する1週間。
神在祭の伝統を未来へつなぐ


出雲大社 千家和比古 権宮司
本殿で祈りを捧げる神在祭(かみありさい)
千家和比古さん
(せんげ・よしひこ)


83代出雲国造・出雲大社前宮司・千家尊祀(たかとし)氏の三男。長男は84代の現出雲国造・出雲大社宮司の千家尊祐氏。次男隆比古氏、宮司子息の国麿氏とともに権宮司を務める。学生時代は考古学を専攻。國學院高等学校での8年間の教員生活を経て出雲大社へ。

神在祭は、かつては「神在斎(かみありのいみ)」と称していました。「斎」とは潔斎、お籠りをして厳粛に神祭に仕えることを意味します。

10月出雲の「神在り」という名辞は「神無し」に対して生まれたものですが、10月の出雲が特異な神祭月だったことに由来します。8世紀の『万葉集』は「十月」表記ですが「かむなづき」と訓じたと思われます。そして10世紀成立の『古今和歌集』には9世紀に詠まれた歌があり、「神無月」と出てきますので、9~10世紀にはこの表記が誕生しています。

12世紀には「神無月」といういい方とともに出雲に全国から神々が集うという伝承も生まれます。また14世紀半ばの出雲大社の文書には「神在の神事を先祖代々仕えている」との記述があり、「神在」用語の嚆矢(こうし)ですが、代々とあるので12~13世紀中には10月に「神在斎」相当のお祭が行われていたものと思われます。

一方『日本書紀』には「出雲大社は高い神殿を建て、それに三つの橋を架ける」とあり、その中に「打橋(うちはし)」があります。この打橋は天つ神世界と国つ神世界の境の川である「天安河(あめのやすかわ)」に架かる橋です。この打橋により天と地・海双方の神々の世界がつながり、神々は往来し集うという思念存在が窺われます。しかも日本の神々は八百万の神というように相対神で、絶対神を思念していません。そこから神議りという合議の発想も出てくるのです。

稲佐の浜で神様をお迎えする神事は「神の時間」である夜間に行われますから厳粛な思いもあり、緊張感もあります。そもそも渚・汀は異界との境時空でもあり、なおさら神々をお迎えする気持ちが強くなるのではないでしょうか。

神在祭は8世紀に淵源(えんげん)契機が辿れるきわめて伝統的なお祭です。大勢の人に毎年来ていただく大切なお祭で、これからもさらに後世につなげていくことが大事だと思っています。とはいえ出雲大社において神在祭のみが特別なわけではありません。いずれのお祭もそれに専念することが基本です。ただ神在祭は他のお祭と異なり、全国から多くの神々をお迎えするという特殊性がありますので、改まる気持ちもあります。お祭が終わって神々をお送りしたときは、今年もつつがなくお過ごしいただき無事にお帰りいただいたと、ほっとした気持ちになります。

神道には「中今(なかいま)」という考え方があります。今自分が生きている時間の意味です。過去があり未来があり、その間の中今にいて、過去からのつなぎを今に生かし向上させ、さらに未来にどうつなげるかが大切です。つなぎ=縁結びのお祭の神在祭の意味価値の一つもそこにあります。
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