更年期をうまく乗り越えたら、60~70代は「阿吽の呼吸」
そもそも男女は、環境の変化に対応できる多様な性質の子孫を残すため、感性が真逆の異性に惚れるようにできているのです。寒がりの夫と暑がりの妻、寝つきのよい夫と悪い妻が一緒になるのですから事あるごとに衝突するのは当たり前。
また多くの男女が日常的に経験する「会話のすれ違い」は、男性脳と女性脳の違いによって生じると考えられます(下の表参照)。
“すれ違い”の原因は脳の違いにあった
「男性脳」「女性脳」は解剖学的な差ではなく、男性と女性が“咄嗟のときに使う脳の回路の違い”を意味しています。
夫婦間のコミュニケーションギャップの多くがこの違いによって生じると黒川さんは考えます。ひと言で説明するなら、男性脳は「ゴール指向問題解決型」、女性脳は「プロセス指向共感型」。
まずはお互いの脳の使い方の違いを知ることが夫婦のすれ違い解消の第一歩です。
相手を責めたり、理解し合えないとあきらめたりせず、お互いの脳の違いを理解し、差を楽しむくらいの気持ちで接するのが夫婦円満の秘訣です。
特に妻が理解しておきたいのは、男性脳が変化に弱いこと。
夫の机の上を勝手に片づけたり、知らない間にカーテンを替えたりすると、夫の脳ストレスは増大し、免疫力が落ちてしまいます。
「くれぐれも妻は、夫に何もいわずに突然ストッキングをはき始めてはいけません。夫の男性脳は予期せぬ妻の外出に動揺し、『どこに行くんだ?何時に帰る?』と確認せずにいられないのです。
それは嫌がらせではなく、夫にとって妻の予定外の行動は大きな不安の種だから。夫の脳に余計なストレスを与えないよう、外出の予定は前もって、繰り返し何度も伝えておきましょう」
変化に弱い男性が大事にするのが、ルーティンです。変化のない日常が男性の小脳を刺激し、直感を冴えさせるのです。
「夫は妻からのルーティンがあると安心します。特に大切なのは家から外へ出ていく瞬間と、家に帰って来た瞬間。したがって『いってらっしゃい』と『お帰りなさい』だけは毎日同じトーンでおだやかに投げかけることを続けましょう。それだけで男性脳は落ち着き、外で思いきり活躍できるのです」。
こうして更年期を乗り越え、結婚30年を迎える頃には夫への愛おしさが戻るといいます。
阿吽の呼吸で通じ合える日を迎えるために、50代のうちから夫婦で共通の趣味を1つ持つとよいでしょう。
「共通の思い出を積み重ねられる夫婦旅行もいいですね。今は“女友達が一番”でも、60代になると“夫が楽”、70代では“夫と一緒がいい”という妻が増えてきます。脳科学的には、結婚35年目に夫婦の真髄が見えてくるのです」