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競泳 元日本代表の井本直歩子さんに聞く、 スポーツ界が一丸となって取り組む「“使い捨て”プラスチック削減」

2024.07.25

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使い捨てプラごみ削減プロジェクト「HEROs PLEDGE(ヒーローズ プレッジ)」の発表会。参画アスリートが集いました。前列右から3番目が井本さん。写真提供/日本財団HEROs

連載「アスリート×社会貢献活動 スポーツでつながる、広がる社会課題解決の輪」第3回 パリ五輪を目前に控え、スポーツ熱がますます高まっています。選手たちの躍動に声援を送るとともに、応援している競技や、競技にまつわるアスリートが取り組む社会貢献活動にも注目してみませんか。スポーツをテーマに、現代社会が抱える課題や未来について考えていく新連載です。連載一覧>>
第3回のゲストは、競泳日本代表としてオリンピックや世界水泳など国際舞台で活躍された井本直歩子さんです。

競技引退後は、国際協力機構 (JICA)、国連児童基金(ユニセフ)の職員として、平和構築、教育支援に従事しました。そんな井本さんが今取り組んでいる「“使い捨て”プラスチック削減」について話を伺いました。

写真提供/日本財団HEROs

写真提供/日本財団HEROs

井本直歩子(いもと・なおこ)さん

1976年、東京都生まれ。3歳から水泳をはじめ、中学から水泳界の名門クラブ「イトマン」に所属。96年アトランタ五輪に3種目で出場し、4×200mリレーで4位入賞。2021年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ジェンダー平等推進チーム・アドバイザーを務める。一般社団法人SDGs in Sports代表、日本バドミントン協会理事。「HEROs AWARD 2019」を受賞。

歴然とした差を目の当たりにした、EUと日本の“使い捨て”プラごみ問題への姿勢

水泳の国際大会への出場を通して、発展途上国について考えるようになったという井本直歩子さん。「発展途上国から来ている選手たちは、当たり前のようにタイムが極端に遅かったり、フォームもめちゃくちゃ。練習するプールがないことやコーチがいないことを知りました。決勝に出てくる選手の国は決まっていました」。


世の中はなんでこんなに不公平なんだろう――。そんな思いが日に日に強くなっていき、国際機関で働きたいと思い始めます。高校卒業後は、国際戦略や環境デザインなどを学べる慶應義塾大学の総合政策学部に進学。20歳でアトランタ五輪に出場したあと、水泳で奨学金を得られるアメリカのサザンメソジスト大学に留学して国際関係論を、その後は英国・マンチェスター大学大学院で貧困・紛争・復興について学びます。

2003年、それらの学びをいかすべく、井本さんは国際協力機構(JICA)のスタッフとして働き始め、07年に念願の国連児童基金(ユニセフ)の職員として、世界各地の発展途上国で平和構築や教育支援に従事。そこから、どのようにして環境問題に取り組まれるようになったのでしょうか。

「5年前に、国連気候行動サミットでの演説を聞いた時、気候変動問題が将来世代の子どもたちが生きていく環境を脅かしている状況を他人任せにしてはいけないと、ようやく目が覚めました。それまで自分は学校に行けない子どもたちの教育支援に専念していればいいと思っていた。でも、地球温暖化による猛暑や雪不足、海洋汚染などは、地球上の生物のみならず、アスリートが競技を行う上でも大きな影響を及ぼしていて、今一丸となって解決しないと本当に手遅れになる。

その当時、ユニセフの仕事でギリシャに赴任していたんですが、EUのプラスチックごみへの取り組みが非常に進んでいました。日本に帰国してみると、使い捨てプラスチックのあまりの多さに辟易して、気候変動問題に対して、まずはここから取り組むことができるんじゃないかなと思うようになったのです」。

志の高い仲間ととともに。使い捨てプラごみ削減プロジェクト「HEROs PLEDGE」を発足

「EUは世界でもっともプラスチック汚染問題への取り組みが進んでいる地域」と井本さんは言います。法整備がどんどん進み、さまざまな規制が次々と設けられ、アクションのスピードが速い。

「EUに比べると、日本ははるかに後れをとっていると感じました。そこで、EUを手本にルール作りをしていく必要があると思い、調べたところ、環境省が国際プラスチック条約(国際的なプラスチック汚染を2040年までに解決するための条約のこと)の締結に向けて取り組んでいることを知りました。けれども、日本は法律が通りにくいこともあり、今のところ“努力目標”というような状態です」。

そんな中、海洋汚染を柱に環境問題に取り組んでいる日本財団の方から、アスリートを中心に社会課題解決の輪を広げる「HEROs(ヒーローズ)」の仲間と一緒に活動しないか、と誘いを受けます。そこで井本さんは“スポーツ界から使い捨てプラごみをなくそう”という活動をはじめてみてはどうかと提案しました。

「私のほうでもすでに気候変動の問題に一緒に取り組んでくれるアスリートを集めはじめていて、とてもいいタイミングでした。まず、海洋汚染と気候変動の二つの問題の共通課題である使い捨てプラごみの問題に取り組むことにしたんです」。

そして、2024年3月末、使い捨てプラごみ削減プロジェクト「HEROs PLEDGE(ヒーローズ プレッジ)」が始動。現在は、33名のアスリートと12組のスポーツ関連団体が参加しています。井本さんの周りで同じように問題意識を持っていた人や、メディアで問題意識を持っていると知り、関係者を通して声をかけた人、ヒーローズ所属のアスリートでプラごみ問題や環境問題に対して何らかのアクションを起こしたいと考えていた人など、志の高い人たちが集まりました。プロジェクトに参加している中のひとり、スキージャンプの高梨沙羅さんは、温暖化による雪不足を肌で感じ、強い危機感を持っているそうです。
※2024年7月23日現在

「高梨さんとは、3年前ぐらいから環境問題についていろいろお話をさせていただいています。とても勉強熱心で、アイディアも豊富で、そしてすぐにアクションにつなげる行動力が本当に素晴らしい。傍で見ていて感動してしまうぐらいです」。

また、バスケットボール選手で福島ファイヤーボンズ所属の田渡凌さんは、室内競技で気候変動の影響を肌で感じていたわけではなかったものの、勉強会に参加して「このままではいけない!」と思い、プロジェクトに加わったといいます。

「田渡さんもとても勉強熱心で、福島県の一人当たりのごみの排出量が全国でトップだと調べてきて、まずは福島のごみを減らしたいと。試合の遠征先でリサイクルの工場に立ち寄るなんていう選手を私は聞いたことがありません。早速、要らなくなったウェアをアップサイクルして軍手にして、ファンの方々とゴミ拾いワークショップを開催してくれました」。
写真提供/福島

バスケットボール選手で福島ファイヤーボンズ所属の田渡凌選手(写真中央)写真提供/FUKUSHIMA FIREBONDS

写真提供/FUKUSHIMA FIREBONDS

6月8日に開催された、福島ファイヤーボンズ主催の「CHANGE THE GOODs ACTION 2nd Action Plan”ボンズ”ゴミ拾いワークショップ」の様子。約4時間にわたり、選手、ファン、スポンサーらが一体となって取り組みました。写真提供/FUKUSHIMA FIREBONDS

ヒーローズ プレッジのアスリートたちから、日々刺激をもらっているという井本さん。選手同士の相乗効果が生まれていくのを目の当たりにし、チームで活動することの素晴らしさ、醍醐味を感じているそうです。

「それぞれが個で活動するのではなく、チームを形成して、互いに真似し合ったり、刺激し合ったり、そういうネットワークを作りたいと思っていたんです。それがヒーローズと一緒に活動することで可能になりました。このネットワークが、今後世の中にどんどん浸透していって欲しいと願っています」。 写真提供/FUKUSHIMA FIREBONDS

「”ボンズ”ゴミ拾いワークショップ」で講演を行った井本さん。写真提供/FUKUSHIMA FIREBONDS

取材・文/鈴木啓子

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