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 “漢方”で幸せホルモンが増加。寝つきが良くなる?うつ病患者の「睡眠改善」の報告も

2024.08.15

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オキシトシン分泌に関わるのはどの生薬?

では実際、加味帰脾湯の中のどの生薬や成分がこの作用をもたらしているのか、と気になることと思います。

2人は、加味帰脾湯を構成する生薬を含む補中益気湯などの漢方薬も実験の対象にして、同じようにオキシトシン神経の活性化について詳しく調べました。すると、補中益気湯は加味帰脾湯と同じ程度の活性化、四君子湯(しくんしとう)は少し遅れて活性化が確認された一方、人参湯(にんじんとう)は活性化が認められなかったことから、オキシトシン分泌に関わる生薬は、タイソウ、トウキ、ショウキョウの3つであることを特定したのです。

さらに、この3つの生薬のそれぞれのオキシトシン神経への影響を細胞レベルで検証したところ、タイソウとショウキョウは神経を活性化させましたが、トウキは単独ではあまり活性化させませんでした。また、3つの生薬を混合することで加味帰脾湯の神経活性化作用と同じ程度になることもわかりました。 


つまり、加味帰脾湯のオキシトシン分泌の作用は、3つの生薬がともにはたらくことで発揮されていることが突き止められたのです。薬理成分としては、タイソウのルチン、ウルソール酸、トウキの(z)‒ブチリデンフタリド、p‒シメン、センキュノライドA、ショウキョウの[6]‒ショーガオール、[8]‒ショーガオールがオキシトシン受容体を活性化することも明らかになりました。

今回のように生薬の組み合わせ効果によるはたらきが科学的に確認されるケースは希です。漢方薬の効果の奥深さを改めて実感するとともに、今後の研究で、さらなるメカニズムの発見があることを期待しましょう。

※この記事は、『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』の内容を抜粋・再構成したものです。
※漢方を実際に使用する際は医師・薬剤師に相談し、決められた用法・用量を守ってご使用ください。 


『東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム』山本高穂、大野 智 著/講談社ブルーバックス 詳しくはこちら>>

私たちの生活に身近なツボ・鍼灸・漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。たとえば、手のツボが便秘改善に効くのはなぜ?、「長寿遺伝子」と漢方薬との関わり、漢方薬が腸内細菌の「エサ」になる?、免疫システムを「発動」させる鍼灸、脳の「ドーパミン報酬系」に作用する鍼灸の刺激、ツボに特徴的な神経構造を発見!など。解明が進む「東洋医学」のメカニズム研究最前線を紹介。

山本高穂(ヤマモトタカオ)

NHKメディア総局 第2制作センター チーフ・ディレクター。1971年東京都生まれ。1997年北海道大学水産学部卒業後、NHK入局。自然科学や健康・医療分野の番組を中心に制作。主な担当作品に、特集番組シリーズ「東洋医学ホントのチカラ」、NHKスペシャル「謎の海洋民族モーケン」「病の起源・うつ病」「巨大災害 MEGA DISASTER・火山大噴火」、ダーウィンが来た!、クローズアップ現代、サイエンスZEROなど多数。

大野 智(オオノ サトシ)

島根大学医学部附属病院 臨床研究センター長・教授。1971年静岡県浜松市生まれ。1998年島根医科大学卒業、2002年同大学大学院修了(医学博士)。その後、金沢大学、東京女子医科大学、帝京大学、大阪大学などを経て2018年より現職。2022年から島根大学医学部附属病院副病院長を兼務。東洋医学を含む統合医療・補完代替療法をテーマに学生講義や医療者・一般向け講演を精力的に行う傍ら、新聞、テレビ(NHK「あさイチ」「クローズアップ現代+」「ガッテン!」など)、ラジオなどメディア出演も多数。

写真/PIXTA

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